どこここブログ

10年以上続くナナブルクの日記

17年生きた猫①

昼休憩中に、母親から一本の電話がありました。

 

まろんちゃんがそろそろみたいなの」

 

あー、ついに来てしまったか・・・っていう気持ちでした。

もう何も食べなくなって4,5日目だったそうです。

 

まろんっていうのは、実家で飼ってる猫(メス)です。

 

(まだそれなりに元気な頃のまろん

 

私が中学1年生の頃、クラスの女の子が猫をもらってくれる人を探してたんですよ。聞いてみると、女の子のお兄ちゃんが下校中に捨て猫をみつけて、じゃんけんで負けたかなにかで持って帰ることになったんだけど、その子の家では親が猫アレルギーで飼えないって話だったように記憶しています。ここで貰われなかったら、保健所に連れて行くしかないみたいで・・・って話をしてました。

 

当時の私の家は、これまでにたくさんの猫を飼ってきてたので、1匹くらい増えてもどうってことないだろうって思ってたんです。別段その子と仲良かったわけではないんだけど、猫のことで困ってるならと「うちならいいと思う」みたいな感じで応えた気がします。エサ代や世話のこととか、諸々あるであろう大変なことは全部親がやってくれてたので、中1だった私はそんな軽い気持ちで答えてたんですね。

 

その日、家に帰って親に話したんです。そしたら「それは無理よ・・・」みたいな感じだったんです。そりゃそうですよね。家にはすでに1匹いましたし。裕福な家庭ではありませんからね。で、私は「そっかー・・・ダメなのか・・・」って思いながら、そういえばもらい手が見つからないと保健所連れていくらしいって伝えると「そういうことなら連れておいで」って言ってくれた気がします。当時の私はなんでなのかさっぱりわかりませんでしたね。保健所が何を指すのか知りませんでしたから。

 

そんなこんなでクラスの女の子に伝えると心底喜んでくれて、近い日に親と一緒に我が家へ来ることになりました。その子が抱きかかえて、私に直接渡してくれました。手のひらに乗るくらい小さな子猫でした。私が抱きかかえると、ツメを目一杯ひろげて必死にしがみつこうとしてたのを、今でも覚えています。あとへんな鳴き声でしたね。にーにーとかじゃなくて、い゛ーい゛ーみたいな声でないてました。親も変な鳴き声だね~って暖かく迎えてくれましたね。

 

名前はまろん。女の子がつけてた名前は「みーやん」という名前でしたが、我が家へきてからは「まろん」と名付けました。母親がモンブランが好きだから、とかそんな理由だったと思います。

 

2000年12月4日の出来事でした。もともと捨て猫だったので本当の誕生日はわからないんですが、この日をまろんの誕生日にしました。捨てられてた影響もあってか後ろ足がわるくて、外に出すのは危険だろうと判断して、まろんは家猫として生きていくことになりました。我が家で飼ってきた猫の中では初の家猫です。

 

私が中学生の頃から結婚して家建てるまでの間ですからね、相当な長生きですよ。間違いなく今までで一番長生きでした。外に出ないので病気をもらうこともなかったし、人間の食べ物を与えないっていうことを徹底したのがよかったのかもしれません。

 

家猫って無性に外に出たがるんですよね。隙きあらば玄関から脱走を試みようとして捕まえられてましたが、たまーに脱走に成功してたんですよ。あれ!まろんがいない!ってなって。探してみたら玄関から出たすぐ横の花壇の隅っこで震えてるんですよね。怖いならでなきゃいいのにって言いながら抱っこして連れ戻してましたけど、それでも外へのあこがれは強かったのかもしれません。なので、たまーに親に黙って抱っこしたまま玄関からすぐのところくらいまでは歩いたりしてました。ほんの数歩だけね。

 

思い出話を書くと17年分になっちゃうので話を戻しますが、そんなまろんがそろそろだっていう電話が昼にあったわけです。

 

もうだいぶ前から弱ってはいたし、親が私に心配かけまいと、連絡こそしてなかったけど病院とかへは連れて行ってたみたいです。で、たまに帰省したときに見ると、ちょっとした段差から降りれなくなったり、耳が聞こえなくなってたり、そういった症状がみられたんですね。なので、いつその時がきてもおかしくはないだろうなって思いながら、帰省するたびにたくさん抱っこして、帰省から戻るときはなんて言葉をかけて出ようかなって毎度のように考えてました。

 

昼に電話をうけてから、仕事なんか手につきませんでした。嫁にはとりあえず連絡して、帰り買い物しようって言ってたんだけど、急遽実家に帰ろうと思うって伝えて。そして例の女の子にも連絡しておきました。そのときの女の子って、嫁さんの親友なんですよね。すごい偶然なんですけど。去年の暮に忘年会したときも3人で一緒に飲むくらい未だに交流があります。

 

で、嫁さんが私があまりにふらふらしてるもんだから、送っていこうか?って言ってくれたんですが、嫁さんは土曜日も仕事があるので迷惑かけれないとひとりで帰ったわけです。もうずっと色んな気持ちが巡ってました。気が遠くなりそうになる度に、まずはしっかり帰ることだけを考えろって言い聞かせながら50分くらいかけて実家へ帰りました。

 

実家に帰ると、ストーブの前で横になってるまろんがいました。まだゆっくり息をしてて、私が手を近づけると鳴いてましたね。鼻は乾ききって、前足に力が入らない様子でした。時折おきあがって、すごいフラフラしながら水飲み場へ行くんですが、水も満足に飲めないような状況で。飲むポーズはするけどじーっと動かなかったり、トイレにいくんだけど何も出なくて。そりゃ食べてませんからね。あとは定期的に風呂場へ行きたがってました。風呂場なんか滅多にいかなかったんですけど、水が飲みたいのかまたお風呂いくの?って。風呂場へいっても、これまたじっとしてるだけなので、寒いから・・・といって抱っこして連れ戻してました。

 

まろんは普段、全然鳴かない猫だったんです。外の草をとってきた時や、家に誰もいなくて人が帰ってきたときにすごい鳴いてましたが、それ以外は物静かな猫でした。そんなまろんが突然ものすごい大きな声で鳴くんですよ。自分の耳が聞こえないから大きく鳴くのかわかりませんが、すごく大きな声で鳴きながら、おぼつかない足取りでふらふらしながら私のほうへ来ようとする姿を見てもう涙がとまりませんでした。居ても立ってもいられなくて、まろんを抱きかかえにいって、腕の中にいるまろんをみると、鳴くのを止めて落ち着いてたんです。このまま息を引き取ってしまいそうな気さえしました。目をみると白く曇ってて、むかしのエメラルド色の綺麗な瞳ではなくなってました。見えているのか見えていないのか、そんなうつろな目で私の方を見てて、また涙が出てきて、この歳になってこんなに涙が出るのかってくらい泣きました。泣きすぎて頭痛がやばかったですね。泣くと頭がいたくなるって知りませんでした。

そのあと、母親のところへ連れて行って、おやすみって言って寝ました。

自分のふとんへ帰ったあとも私はずっと鳴いてましたね。枕元にティッシュは必需品でした。